大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和25年(オ)81号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(要旨)① 甲が乙の印章を盜用して売買名義の下に甲の名義に土地所有権移転登記をした場合において、その後乙が右売買による所有権の移転を認めたとの事実を認定しただけで直ちに右売買による甲の土地所有権の取得ありとするのは理由不備である。

② 売買による所有権の移転の主張があるにすぎない場合売主とされている者が事後において右売買による所有権の移転を認めたとの事実により所有権の移転ありとするのは当事者の主張に基かない判断である。

(説明)「乙が罪を犯して入獄中の明治三九年一〇月頃その長男である甲が父の印判を不正に使用し、本件土地を含む十数町歩の土地につき売買名義の下に所有権移転登記を受けたが大正二年中乙が出獄してこれを知り告訴沙汰にまでなつたが親戚中の配慮により乙は右買売による所有権移転を認め、本件土地は乙の隠居面としてあらためて甲より乙に贈与することとなつたが登録税金等に差支えこれが登記未了のまま時日を経過し来つた」というのが原審認定の事実であつて、原審は右事実に基き甲から本件土地を譲受け、その登記を了した被上告人から現に右土地を耕作している上告人(乙の娘であつて乙の生存中は乙のために右土地を耕作しつつその身の廻りを世話していた関係上乙の死後も耕作を継続している)に対する所有権に基く土地引渡請求権を保全するための仮処分申請事件について甲の前記売買による本件土地所有権の取得あることを前提として被上告人の申請を容れ第一審が為した本件土地につき上告人の占有を解き執行吏の保管に付する旨の仮処分判決を維持した。被上告人の所有権取得を争う上告理由に対する最高裁の判断は次のとおりである。即ち「原審の認定によれば甲乙間の売買なるものは只甲が乙の印を盜用して所有権移転の登記をしただけであつて当事者間に何等の意思表示もなく実は売買契約は全然存在しなかつたのであり、無効の行為があつたのでもない」。それ故これが追認ということもあり得ない。従つて「乙が売買による所有権移転を認め」といつているのは何の意味かわからない。「右売買なるものは全く存在しないのであるから存在しないものの効力を認めるというのは意味をなさない。原審は或は何等か新な行為をしたものと認めた趣旨かもしれないが、それとしても如何なる行為であるかわからない。しかのみならず「乙が右売買による所有権を認めた」という事実は原審において何人もこれを主張した形跡がない。原審の前記判示はそれ自体意義不明(理由不備)であるのみならず当事者の主張しない事実に基いて判決をした違法あるものというの外はない」因みに被上告人は甲乙間の売買による所有権の移転を前提として自己の所有権の取得を主張しているものである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!